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お知らせ

【事例紹介】子どもの貧困に向き合う学生服のリユース・リサイクル

REPORT / 2024.07.12

今回は、県内最大の学生服専門リサイクルショップ「学生服リユース・リサイクルゆいまぁる」の活動をご紹介いたします。

学生服のリユース・リサイクルゆいまぁる
與那城 寿恵子さん

■学生服リユース・リサイクルショップゆいまぁるについて

 学生服リユース・リサイクルゆいまぁるは、ご家庭にあるいらなくなった学生服を買い取り、洗濯やお手入れをして、必要な方にお安く販売する学生服専門のリサイクルショップです。中南部の学校を中心に、約2万点の品揃えで県内全域ほぼすべての中学校・高校の学生服を取り扱っています。

  スタッフは3名と少ないですが、学生服の洗濯やお手入れを就労支援事業所の方々に協力してもらうことで、たくさんの学生服をきれいな状態で販売できるサイクルができています。


■はじまりは「子育てしている人たちに喜んでもらいたい」という気持ち

 ゆいまぁるを始めたきっかけは、私の周りのお母さんたちが「学生服って高いよね」って話していたことでした。私自身も子育てしている主婦で、当時は私の子どもは学生服が必要な年齢ではなかったのですが、子どもは成長していくと手はかからなくなるけどお金がかかるということはすごく実感していました。周りの話を聞いていると自分の子どものことではなくても、心配な気持ちになり、家計を抑えるために一生懸命なお母さん・お父さんたちの助けになりたい、喜んでもらいたいと思いました。

 さらに、ある日、たまたまテレビを見ていたら、県外の学生服リサイクルの取組が紹介されていました。これは子育てしているお母さんたちも喜ぶし、沖縄が抱えている収入が低いことやシングルマザーが多いこと、子どもの貧困などの問題を解決する一歩になるのではないかと思い、沖縄にこそ必要な取組だと思って、2016年に近所の小さなアパートの一室を借りて、数十着の学生服からスタートしました。

 はじめた頃は全てが手探りだったので、看板もホームページもなく、手書きのチラシを配ったり、お母さんたちの口コミで広げてもらったりしました。また、当時は学生服のリユース・リサイクルが珍しい取組だということで、メディアにも取り上げてもらったおかげで多くの方から学生服の持ち込みや寄付が集まるようになりました。今では県内最大の品揃えになり、3〜4月の卒業・入学シーズン、8〜9月の衣替えシーズンは多くのお客様がきてくれます。特に、高校の合格発表がある3月15日には300名ほどのお客様が来てくれて、お店の前に行列ができるほどです。

写真:アパートで活動していた時の様子と現在の店舗前にお客様が並んでいる様子


■学生服って思っていたより高い

 学生服の金額はあまり知られていませんが、シャツやズボン、スカートなどを新品で1着ずつ買うと、だいたい5万円ほどになります。しかし、学生服は毎日着るものなので2着以上買ったり、成長してサイズが合わなくなって買い替えたりすることがほとんどです。さらに、入学準備の時は学生服以外にも体操服や指定ジャージ、シューズなども揃えなくてはいけないので、実際はもっとお金がかかります。しかし、ゆいまぁるでは新品の6割〜8割引きの金額で買うことができます。半額以下で買うことができるのは、ゆいまぁるの一番の強みです。

 毎年、ゆいまぁるを利用してくれるお客様のうち、約8割のお客様はできるだけ安く買って家計を抑えたいご家庭ですが、それ以外にも、学生服を買うお金がないご家庭や、親御さんがいないご家庭の方たちもいます。子どもが自分で稼いだバイト代で買いに来てくれたり、おじいちゃん、おばあちゃんが年金を使って買ってくれたり、中には、昼夜一生懸命働いて子育てしているシングルマザーの方が「学生服に5万円出すのが本当に苦しいと思っていたから、ゆいまぁるがあって良かった」と泣きながら購入されたこともありました。

写真:学生服が並ぶ店内の様子とゆいまぁるを利用したお客様からのお手紙


■子どものことを思っているのは親だけじゃない

 学生服のお問合せは、親御さんだけでなく、学校や施設、スクールカウンセラーさんからのご相談もあります。

 実際に、学校の先生からお電話を受けた時の話ですが、自分が担任をしているクラスの生徒で入学式から一度も学校に来たことがない子がいたので、心配になって訪ねてみると、家にはその子一人だけだったそうです。親はずっと遊び回っていて、その子は放置されている状態で学生服も買ってもらえないため、学校に行けなくて引きこもっていたということでした。先生が「学生服を買うから学校に来れるか?」と聞くと、その子は「学校に行きたい」と答えたそうですが、先生もご自分で5万円の出費は難しかったため、ゆいまぁるで一緒に解決することになったこともあります。


■学生服を気持ちよく着てもらうために

 ゆいまぁるでは、お子さんに気持ちよく学生服を着てもらうために、買い取りした学生服の洗濯やお手入れ、名前の刺繍外しをして販売しています。
 はじめの頃は、接客をしながら洗濯やシミ抜きをしたり、スタッフに持ち帰って洗濯してもらったりしていましたが、時間と労力がすごくかかるので、今では、就労支援事業所の方たちに協力していただいています。
 無理せずにできる範囲で協力していただくために、学生服の洗濯はホテルのシーツなどを洗っている事業所にお願いして、刺繍外しは小さな手作業やお裁縫をしている事業所にお願いしています。

 たくさんの学生服を手入れすることは大変な作業ですが、就労支援事業所の方たちは「いろんな作業ができることが嬉しい」「子どもたちのためになっていると思うと働きがいがある」と言ってくれます。協力してもらっているおかげで、たくさんの学生服を安く販売できるようになりましたし、スタッフの負担が減ったことで、接客や在庫の整理などに注力できるようになり、お店を拡大することもできました。
 就労支援事業所で働く方たちの働きがいと、たくさんの学生服を安く提供できることを両立するためにお互いがwin-winになるように、仕事内容などを相談しながらやっています。

写真:クリーニングするためにまとめられた学生服と学生服を丁寧に畳む様子


■今後の展望

 7年前に、小さなアパートの一室からはじめて、お母さんたちの口コミやメディアのおかげでたくさんの方に知ってもらい、いろんな方のご協力もあって、沖縄中の学生服を取り扱えるようになりました。子育てをしているお母さんたちを助けたいという思いからはじまったゆいまぁるですが、いろんなご家庭の人たちとお会いする中で、本当に困っている人たちも助けることができるお店でもあり続けたいと思うようにもなりました。

 毎年、困っている方のお話を聞きますし、学生服を買いに来てくださる方たちもすごく喜んでくれる姿を見ると、改めてゆいまぁるの取組をずっと続けていかないといけないなと思います。さらに、続けていく中で、子どもの貧困問題の解決の一歩になっていたり、就労支援事業所の方たちが働きがいを感じながら仕事ができるサイクルを広げたりしていくことができたらいいなと思います。

 また、県内には学生服のリサイクルショップがいくつかあるので、横のつながりを大事にして連携しながら、これからも皆さんに喜んでもらえるようにこの取組を続けていきたいです。 

学生服リユース・リサイクルゆいまぁる

所在地:〒901-2126
沖縄県浦添市宮城5-6-2きたなはマンション105

TEL:080-2790-4982

HP(https://yuimaruokinawa.com