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【事例紹介】廃ガラスのリサイクルが叶える循環型社会

REPORT / 2024.08.19

今回は、廃ガラスの有効なリサイクル方法を確立し、全国に広めている株式会社トリムの活動を紹介します。

株式会社トリム
常務取締役 事業本部長
玉那覇 毅さん

■株式会社トリムについて

 株式会社トリムは、昭和49年に創業し、健康食品・器具等の販売業や飲食業をはじめ、さまざまな事業を行ってきました。平成7年に容器包装リサイクル法の制定を見据え、社内でリサイクル事業の検討委員会を立ち上げて全国的にもリサイクルが難しいとされている廃ガラスのリサイクルに取り組み始めました。

 何度も試行錯誤を重ね、リサイクル事業が発足して4後の平成11年には「軽量資材スーパーソル」製造プラントの稼働を開始し、廃ガラスのリサイクル方法を確立しました。


■「おもしろそう」からはじまった廃ガラスのリサイクル

 私たちが廃ガラスのリサイクルに取り組もうと思ったきっかけは、有効なリサイクル方法が確立されていない廃ガラスをリサイクルすることができたら面白いのではないかと思ったからでした。
 一般的にガラスのリサイクルは、白や茶などの色ごとに選別したガラスを小さな粒(カレット)にした段階で処理を終え、ガラスびんを造る原料として使用されます。ところが、白や茶以外の混色のガラスを有効利用する方法が限定的なので、ガラスリサイクルが難しいと言われています。

 以前は、小さな粒状にしたガラスを道路のアスファルトの混ぜ物として使用する方法が全国的に広まりましたが、この方法だと、使われるガラスの量は少ない上に数年経って風化等で削れてしまったらゴミになります。そこで私たちはガラスをガラスのままリサイクルするのではなく、ガラスを活かすためのリサイクル方法を模索しました。

写真:スーパーソル製造プラントと小さな粒状にしたガラス


■沖縄だからこそ生まれた技術

 ガラスはアルミや紙など他の廃棄物と違って、腐食したり劣化したりすることもなく、100年経ってもガラスの形状を保ちます。廃ガラスは減容化することがないため、処理場でも困り物扱いされています。特に島しょ県である沖縄では、山積みになった廃ガラスを処理するために、県外へ運ぶとしても大きな輸送コストがかかるため、地産地消の仕組みを構築する必要がありました。

 廃ガラスを沖縄県内で有効的にリサイクルする方法を模索する中で、小麦粉からパンや麺ができるようにガラスを粉にすることで面白いものができないか?と調査した結果、ガラスの粉をセラミック化するという海外の技術と出会いました。しかし、この技術では限られた量しか作れないという課題があり、何とかこのアイデアを活かして、大量に製造する方法について検証を重ね、ガラスを原料にしてガラスとは全く違う素材を造るという今までにないリサイクル方法を確立しました。その方法で誕生したのが軽量資材「スーパーソル」という商品です。

スーパーソルは、96〜97%の廃ガラスと約3〜4%の添加材を混合して製造します。
主に、以下の5つの工程をたどって製造します。

1.ガラス瓶を粒状(カレット状)に砕く
2.カレット状のガラスをさらに細かい粉にする
3.粉になったガラスをふるいにかけて、製造に適した粉を取り出す
4.選別されたガラスの粉に添加材を均一に混ぜ合わせる
5.焼成路で約700度〜900度の温度で焼成する
焼かれた後、空気中に出され、急激に冷やされることで小さく割れていきます。

 スーパーソルを製造する「スーパーソル製造プラント」は、廃ガラスを投入すると全自動でスーパーソルを製造できるため、輸送などのコストがなく、プラントがある場所のみでリサイクルが完結する画期的なプラントです。

写真:スーパーソル製造プラントのしくみと廃ガラスから生まれたスーパーソル


■さまざまな分野で活用されるスーパーソル

 廃ガラスからつくられるスーパーソルの最大の特徴は多孔質であり、保水性、通気性、排水性に優れていることです。また、ガラスが原料なので、熱や水に強く、過酷な環境の中でも利用することができ、有害物質の発生や腐食などもないため、とてもエコな製品です。さらに、ガラスと添加材の配合によってさまざまな用途に合わせて製造することが可能なので、土木や緑化分野をはじめ、農業、水質浄化など、さまざまな分野で使用されています。

 特に土木分野では、スーパーソルの軽量性を活かし、構造物の土圧を軽減する資材として橋やトンネル、擁壁など、多くの現場で使用されています。また、排水性もあるため、水はけが悪いスポーツ施設やグラウンドの排水資材としても使用されています。

 緑化分野の中でも、屋上緑化はスーパーソルの特徴が最大限に発揮されます。スーパーソルの比重は土の1/6〜1/8程度ととても軽いため、建物にかかる土の荷重を軽減しながら、植物の生育を助けます。

写真:土木工事に使用されるスーパーソルと水質維持に使用されるスーパーソル


■今後の展望

 SDGsが叫ばれる以前からガラスのリサイクルに取り組んでいましたが、はじめの頃は営業に行って「環境にやさしい、エコな商品です」と言っても聞いてもらえなかったこともありました。でも、SDGsの考え方が広まってからは大きく注目していただけるようになり、全国各地からお問い合わせいただいたおかげで、現在、全国で18箇所にスーパーソル製造プラントが広がっています。しかし、全国47都道府県あると考えたらまだまだ道半ば。海外への展開も含めて、その地域のガラスの処理問題を解決しつつ、さまざまな分野で活用できるスーパーソルの技術を広めることで、地域融合型リサイクルシステムの構築を目指したいと思います。

 さらに、5年後、10年後には使用期限を迎えた太陽光パネルの大量廃棄も想定されています。太陽光パネルは全体の重さの約65%がガラスでできていると言われており、その処理方法について、多くの企業から相談をいただいています。さまざまな分野のお困りごとの解決に向けて取り組み、沖縄発祥のオンリーワン技術を国内のみならず、海外にも広げていきたいと思います。

株式会社トリム

所在地:〒901-0503
沖縄県八重瀬町字新城1763-1
TEL:098-996-5977
HP(https://www.trims.co.jp)