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お知らせ

【事例紹介】環境に配慮したコンクリート製品

REPORT / 2024.10.11

今回は、コンクリート資材の総合メーカー「株式会社キョウリツ」の活動をご紹介いたします。

株式会社キョウリツ
常務取締役 製品部工場長
内山 忠明さん

株式会社キョウリツについて

 1972年設立、当工場で製造した生コンクリート(レディーミクストコンクリート)と、コンクリート側溝やコンクリート壁などを製造・販売しています。これまでの実績や製品品質が沖縄県内外で高く評価され、弊社製品であるゴールコン擁壁が沖縄県で初めて大臣認定擁壁(建設省沖経民発第1号)、建設技術審査証明(技審証第0904号)、NETIS登録技術を取得しました。

 また、サトウキビの廃材(バガス)を使った「バガスコンクリート」や、自己治癒コンクリート「Basilisk(バジリスク)」など、沖縄県の環境に配慮した製品づくりにも積極的に取り組んでいます。

 従業員は男性71名、女性12名の計83名。男性の方が多いですが、男女関係なく採用していて、現場で働く女性もいます。

写真:U字溝などのコンクリート製品を製造する工場内の様子


コンクリート業界が考えなければならないSDGsとは

 私たちがSDGsに取り組み始めたのは3年くらい前からです。実は、コンクリートは、製造過程で非常に多くの二酸化炭素を出していると知ったのがきっかけです。

 コンクリートの主原料は石灰石から作られるセメントですが、このセメントを作る時に焼く工程があります。石灰石を焼くとセメントと二酸化炭素に分かれるのですが(CaCO3⇒CaO+CO2)、質量の半分くらいが二酸化炭素なのです。私たちが世の中に大量の二酸化炭素を出していると知った時、何とかしなければ、これは我々業界の急務であり、責務だと思いました。石灰石の原材料はサンゴ礁なのですが、海中の二酸化炭素を吸収してサンゴになって、それが化石になって石灰石になります。せっかく固まった二酸化炭素を人工的に分解して、また外に出しているのかと思うと、このまま漠然と仕事をしていいのか、考えなければならないのではないかと思いました。

 調べてみると、他の都道府県のコンクリート業界でSDGsに関する取り組みが行われていると分かり、おきなわSDGsプラットフォームの存在を知りました。そこで、SDGsに関するさまざまな情報を共有しSDGsを推進していければと思い、おきなわSDGsパートナーに登録しました。


自己治癒するコンクリートで長寿命化を図る

 コンクリートの生成で多くの二酸化炭素を排出していると分かっても、今の世の中からコンクリートを全てなくすわけにはいかないので、将来にわたって使用量を減らし、スクラップ&ビルドをできるだけ減らすためには、コンクリートの長寿命化が必要だと考えました。そこで目を付けたのが、北海道のコンクリート会社が開発した自己治癒するコンクリート「Basilisk(バジリスク)」です。

 コンクリートの中に特殊なバクテリアが入っていて、ひび割れした箇所に水をかけると、このバクテリアが乳酸カルシウムと酸素を取り込んで分解し、生成された炭酸カルシウムがひび割れを自分で修復するのです。自己治癒する「Basilisk」は、一般的なコンクリートに比べて価格は約1.5倍ですが、耐久年数約60年といわれているコンリートを100年に延ばすことができますし、ひび割れなどの改修工事そのものをなくすことができ、メンテナンスフリーになるメリットがあります。「Basilisk」は水がないと自己治癒できないので、水路などへの活用が期待でき、実際に、名護市三原地区の農業用水路に使用されています。

写真:ひび割れを自己治癒するコンクリート「Basilisk」


サトウキビの廃材を使ったコンクリートを研究開発

 サトウキビ栽培は沖縄の主幹第一次産業で、年間20万トン以上のバガス(サトウキビ廃材)が産出されています。肥料や飼料にも活用されていますが、まだまだ使い切ることはできていません。また、コンクリートの材料となる砂を産出する山の資源にも限りがあるため、サトウキビの硬い繊維をコンクリートに活用できないかと思い、2020年から琉球大学の皆さまとバガスを使ったコンクリートの共同研究を始めました。

 以前からコンクリートの中に鉄筋を入れず、繊維で強化する繊維コンクリートという製品がありますが、主に樹脂繊維を使って作られており、これも石油化学製品の一種であるため、極力使わない流れになってきています。そこで、バガスコンクリートが繊維コンクリートの代替品になればと、実験を重ねているところです。

 バガスコンクリートは、耐えられる重さが鉄筋コンクリートより低いことが課題なので、歩道と車道の間にある境界ブロックなどへの活用を目指しています。もう一つの課題として、サトウキビの繊維なので、どうしても砂糖の成分が少し残ってしまいます。砂糖とコンクリートは相性がよくないので、コンクリートが固まるまで遅くなるのです。

 これからクリアしなければならない課題はいくつもありますが、沖縄県民として、資源循環型の地場を形成したいという思いがあるので、沖縄の特産品であるサトウキビを活用した新しい製品を開発していきたいです。材料を輸送するにも二酸化炭素を排出してしまうので、やはり地産地消型でやっていきたい、沖縄のものを使っていきたいと考えています。おかげさまで業界や自治体などからの注目度は高く、サンプルを送ってほしいという問い合わせが全国から寄せられています。


■今後の展望

 私たちは2050年カーボンニュートラルの実現に先駆け、創立75周年に合わせて目標よりも3年早い2047年に、二酸化炭素の排出実質ゼロを掲げています。その目標を実現するためには、毎日使っているセメントが二酸化炭素を出している以上、どこかでマイナスにしなければいけないので、カーボンキャプチャするようなものを導入し、セメントと一緒に混ぜて、CO2マイナスのコンクリートを作っていくのが目標です。

 海外では既に、空気中の二酸化炭素を吸い込んで石や砂にする技術が生まれています。そのような技術を活用して、低炭素コンクリート、カーボンネガティブコンクリートが開発されたら、私たちも積極的に活用したいです。

 さらにSDGsの取り組みを始めてから、SDGsに関する認識の高い社員が入社するようになっています。私たちのバガスコンクリートに興味を持って転職を考えてくれたり、自己治癒コンクリートの取り組みを採用面接で話してくれたりする方が増えています。また、小さなことかもしれませんが、社内の照明をLEDに変えたり、アイドリングストップを心がけたり、昼休みに電気を消したり、できることから始めています。

 SDGsには、使う責任、作る責任がありますので、コンクリート資材の総合メーカーとして、強いテーマとして意識していきたいと思っています。

株式会社キョウリツ

所在地:〒904-1111
沖縄県うるま市石川東恩納1406-99
TEL:098-965-6321