今回は、コーヒーを軸とした農業振興と地域開発に取り組む、琉球コーヒーエナジー株式会社の取組をご紹介いたします。
琉球コーヒーエナジー株式会社
代表取締役 高木 伸明さん
(写真左下)
琉球大学工学部 與那篤史研究室の皆さん

■沖縄を世界に誇れるコーヒーアイランドにしたい
琉球コーヒーエナジー株式会社は「沖縄県を世界に誇れるコーヒーアイランドにしたい」との思いで代表の高木氏が始めた「百名珈琲プロジェクト」から始まりました。南城市百名において、使われていない農地を取得しコーヒー栽培を開始。地域の農家や志に賛同する仲間が集まり、任意団体として設立しました。
その後、九州地区スタートアップを支援する大学公募の起業イベントに応募、採択され、農学部の持つ栽培学、微生物学や、工学部の持つ環境工学、設計・再エネ等の研究技術を活用した連携により、創業された琉球大学発ベンチャー認定企業です。


■きっかけは沖縄の農家減少、食料自給率の低さを知ったこと
沖縄では毎年約600人が離農しており、新規就農者数はその数にまったく追いついていません。離農の要因は農家の高齢化や経営不振など様々ですが、農業がもっと魅力的な産業にならなければならないと感じています。
また沖縄県の食料自給率についてはわずか32%にとどまります。(※R3年度カロリーベース値)。島国である沖縄は地理的要因や台風襲来により、本土と比較して野菜などの作物価格も高値。沖縄の第一次産業が衰退していくことについては、もっと危機感を持つべきだと感じます。持続可能な農業を実現するためには、課題に対する総合的な対策をしていかなければなりませんし、また我々が大学発ベンチャーであるからこそ、もっと声を上げていかなければならないと考えています。
■コーヒーが沖縄の新しい特産品となる可能性
日本のコーヒー消費量は世界3位と需要が高い一方、その消費量のほとんどを輸入に頼っています。日本で唯一の亜熱帯気候である沖縄は、コーヒー栽培に適した地域であり、沖縄産コーヒー豆は希少な国産コーヒーとして市場価値の高い農作物となる大きな可能性を秘めています。そこで世界三⼤コーヒーのひとつであるハワイ「コナ(Kona)」をモデルとして、⾼品質な沖縄産コーヒーの世界的ブランドを確立しコーヒーを主軸に沖縄の今後の産業発展に貢献したいと考えています。2033年には年間1,000トンの生産を目指しています。


■沖縄に合わせた耐候型ソーラーファーミングを標準に
現在、沖縄県内で行われているコーヒー栽培は露地栽培が主流ですが、私たちはハウス栽培にこだわります。農地を集約、システム化し少人数で効率的にたくさん作ることが可能であるオランダ型スマート農業の技術を用い、また沖縄で農業を行ううえでの環境的課題である台風、長雨、塩害に対する対策として、「耐候型統合制御ハウス」を開発しました。他のコーヒー農家や新規就農を目指す方にも低コストで提供が可能です。将来的にはコーヒー以外の農作物にも展開ができればと考えています。
また世界的にカーボンニュートラルを目指す中、沖縄県の発電電力に占める再生可能エネルギー比率は8%に留まっています(2023年時点)。私たちは耐候型ハウスにソーラー設備を搭載し、自然エネルギー資源を活かして発電するソーラーファーミングを推進し、SDGsに貢献します。

■収穫された「コーヒーチェリー」は大部分が廃棄される
一般的にコーヒーの実であるコーヒーチェリーは、コーヒーの原料となる生豆を取り出すと、残った果肉と果皮は廃棄されるか堆肥として利用されます。しかしこの部分は糖度20程度でとても甘く美味しいうえに、栄養価も高いのです。


■食品ロス削減に貢献した新しいクラフトビール
私たちはこれまで廃棄されていたこの果肉・果皮の活用として、アルコール発酵させビールを作ることを着想し、試行錯誤の末に、2024年1月、世界初の「コーヒーチェリービール」を開発することに成功しました。
ベルギーの伝統的な醸造所で学び、素材の力を活かした自然に近い製法である無濾過製法にこだわっています。酵母が生きたままの滑らかな口当たりと、コーヒーチェリー由来のほのかな酸味、そして甘苦くフルーティーな味わいにより、新しい食体験をお楽しみいただけます。何より、食品ロス削減に貢献できるサスティナブルで新しい製品が誕生したことにより、コーヒー生産者にとってはこれまで廃棄していた部分で新たな収入源を確保することにも繋がります。


■今後の展開
私たちは、このコーヒーチェリービールの今後の展開として、那覇市の栄町エリアに直営飲食店「Craft beer & restaurant 花咲か爺さんの家」(通称:はなじい)を2025年4月にオープン予定です。同店舗は2024年10月に惜しまれつつ閉店したお店で、ご縁あってこの店舗跡地を貸していただくことになり、前オーナーの想いや多くのお客様に愛されていた歴史を残したく、屋号と一部メニューを引き継ぐこととなりました。この店舗はお客様へ直接、コーヒーチェリービールの特徴や想いをお伝えできる場、そしてビールやコーヒーを愛する方々がお互いに交流できる場として、地域活性・産業活性に繋げたいと考えています。
また私たちのようなマイクロブリュワリーと呼ばれる、クラフトビールを製造する小規模ビール製造所は県内に幾つかありますが、その多くは販売場所や実際に飲める場が充分でない課題を抱えています。そこで他ブリュワリー様のクラフトビールも多く取扱いをさせていただく予定です。お客様には様々なビールの飲み比べも楽しんでいただき、県内クラフトビールの認知拡大にも貢献したいと考えています。

(同社のコーヒーチェリービール)


■「サスティナブル」から一歩進んだ「リジェネラティブ」な地域開発へ
私たちは従来の仕組みやシステムを改善し、人々がより幸福になるものへと改めていくという意味のある「リジェネラティブ」な地域づくりに貢献したいと考えています。前述した耐候型統合制御ハウスの開発・低コストでの提供や、耕作放棄地の利活用促進、ソーラーファーミング、廃棄ロスのないコーヒー資源の有効活用、地域交流の促進、これらコーヒーを核とした農業振興と地域開発により、沖縄の経済活性に貢献していきます。


琉球コーヒーエナジー株式会社
【本 社】〒901-0603 沖縄県南城市玉城字百名1147番地 コーポ百名 403号
【研究室】〒903-0129 沖縄県中頭郡西原町1番地 琉球大学 産学官連携棟204-1
■WEB:https://ryukyus-coffee-energy.eco/
■商品プロモーションサイト: https://ryukyus-coffee-beer.com/
【直営飲食店】「Craftbeer & restaurant 花咲か爺さんの家」
所在地:沖縄県那覇市大道172−31
Instagram: https://www.instagram.com/hanasaku.craftbeer_coffe/